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ピアジェとヴィゴツキーで違う!?|内言と外言,自己中心的言語とは

   

さて,今回は「言語発達」についてのお話です。

ピアジェ(Piaget, J.)とヴィゴツキー(Vygotsky, L. S.)の言語発達の考え方はどのようなものなのでしょうか。

ピアジェ(Piaget, J.)とヴィゴツキー(Vygotsky, L. S.)の言語発達の考え方はどのようなものなのでしょうか。

あなたは日々の生活たくさんのことばを使っています。

家族や友人,同僚や上司と会話をするとき,今日や明日の予定を思い出すとき,勉強しているとき,本や新聞を読んでいるときなど,さまざまな場面でことばを使っています。

そして,もちろんこの記事を読んでいるときにも「ことば」を使っています。

こうした,ことばは子どもの頃から,日常生活や学校での学習を通して身についていきます。

今回は,その「言語発達」という点から,これまでもお話に出てきたピアジェ(Piaget, J)とヴィゴツキー(Vygotsky, L. S.)という人物の考え方を中心にして見ていきましょう。

 

ピアジェの言語発達の考え方とは!?

ピアジェの言語発達の考え方は,簡単に言うと「内→外」です。

人間の使う「ことば」には,「音声を伴うことば」と「音声を伴わないことば」の2つがあります。

前者は,他者とコミュニケーションをとることを目的とします。

つまり,家族や友人を会話をしたり,相手に自分の希望や要求を伝えたりするときに使うものです。

後者は,自分の頭の中で使うことを目的とします。

つまり,テスト中に自分の考えを整理したり,授業中に先生の言っていることを頭の中で理解したりといったときに使うものです。

言語発達を考えるときに、重要な問題となったのは,『この2つの「ことば」はどちらが早く身につくのか?』ということでした。

発達心理学に大きな貢献をしたことで有名なピアジェは,先に頭の中で使うことばが身について,それからコミュニケーションのために使うようになると考えました。

つまり「内→外」の方向性の言語発達を仮定していたのです。

 

ヴィゴツキーの言語発達の考え方とは!?

一方で,ヴィゴツキーの言語発達の考え方は「外→内」でした。

生まれたばかりの子どもには,頭の中で何か考えてから話をしているというものではないと考えたのです。

よくわからないながらも,他者とコミュニケーションをとることによって,外的な言語を獲得され,しだいにそれが頭の中でも使えるようになると考えました。

そして,他者とのコミュニケーションに使うことばを「外言」,頭の中で使うことばを「内言」と呼びました。

つまり「外→内」の方向性の言語発達を仮定したのです。

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結局,どっち!?

それでは,結局どちらの主張が納得のいくものなのでしょうか。

いろいろとポイントはあるかと思いますが,最も重要なもののひとつには,「自己中心的言語」というものがあると思います。

自己中心的言語とは,音声を伴うことばでありながら,発言の内容はその人の思考の内容であるものをいいます。

仕事をしていて状況が複雑になったときに,一度声に出して状況を整理してから考え直してみるということがあるでしょう。

たとえば,何人かでドライブをして食事をした後に,かかった費用を精算しようといったときに,それまでに誰がいくら払っていたかでそれぞれがやりとりする金額が変わってきます。

そうした時に「えっと…AさんはBさんに○○円払っていたから…Cさんは…」と独り言をすることがあります。

このようなことばが自己中心的言語なのです。

ピアジェはこの自己中心的言語を,内言から外言への移行期に現れるものとしました。

自己中心的言語は,思考をうまく伝えられない子どもの幼さの現れであるとしました。

つまり,自己中心性という幼さの現れであると考えたのです。

これは成長するにしたがって脱中心化し,コミュニケーションがうまくなっていくとかんがえました。

しかし,ヴィゴツキーは自己中心的言語が移行期に現れるものではあるが,それはコミュニケーション機能と思考機能の両方を兼ね備えたものであるとしたのです。

つまり,それまでコミュニケーションのみに使っていたことばを,しだいに頭の中で思考に使えるようになっていく時に現れると考えました。

その後,さまざまな研究が積み重ねられ,いまではヴィゴツキーの考え方の方が納得のいくものとされ,ピアジェも自身の考えを修正したと言われています。

 

まとめ

これまで「言語発達」についてピアジェとヴィゴツキーの考え方の違いを中心にお話してきました。

同じことばの発達という側面だけを切り取ってみても,正反対の考え方が存在するのはとても興味深いことですね。

ヴィゴツキーは「社会から個人へ」という方向性を,自身の理論のあらゆるところにちりばめています。

最初は他人と一緒にしていたことを自分ひとりでできるようになることを「発達」と考えたと言えます。

これは「発達の最近接領域」という考え方にも通底するものがあるでしょう。

このように言語発達には正反対の考え方があります。

いまでは,「外言→自己中心的言語→内言」という流れで,子どもの言語発達を理解することが主流となっているようです。

 - 発達心理

        

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